地下足袋山中考 NO9
<高速道路の延伸と道の駅の衰退>

「道の駅」の発想は、「道路にも鉄道の駅のような憩える場を」という提唱がきっかけとなり、国土交通省が平成5年度から始まった第11次道路整備5カ年計画に位置付け積極的に推進してきた。平成2241日現在、全国で936駅が登録され、秋田県では今年7月に「こさか七滝」を加え29駅が登録されている。▲道の駅は、24時間利用可能な無料で十分な容量の駐車場とトイレ、道路及び地域の情報案内などの条件を満たせば登録ができるため、地域の特徴をアピールした多様な「道の駅」ができている。特に98%の「道の駅」で特産物等の販売が行われ、温泉、美術館、宿泊、キャンプ場を併設した道の駅も登場した。道路利用者のための休憩と情報発信、町と町が手を結びあう地域の連携機能を併せ持つ道の駅だが、その裏で思わぬ苦戦を強いられている駅も現れた▲それは、国道と平行に走る高速道路の延伸に伴い交通量が激減に転じた既存の道の駅だ。主要観光地へのインターチェンジやアクセス道路の起点終点を持たない「道の駅」は死活問題になる。秋田県では日沿道整備に伴う道の駅「象潟、にしめ」が懸念されている。▲数年前に北海道噴火湾沿いの長万部界隈の海産物店や道の駅が、道中自動車道の延伸で軒並み廃業に追いやられた姿を目にした。観光拠点間の移動を急ぐ利用者は、マイカーも貸切バスも高速道路に乗ると降りることはない。▲もう一方の懸念材料は、高速道路の主要サービスエリアが全県の特産物を扱うメガマートになり、一般車両の乗入れとETC車の出入りも可能になったことだ。高速料金の無料化、低廉化が進み一般国道との垣根が低くなれば、サービスエリアは高速利用者に限らず地域の道の駅としての存在と機能を持つことになる▲北秋田市の物販機能を担う近隣の駅事情をチェックしてみたい。国道105号線の「あに」、国道13号線の「ふたつい」と「たかのす」、国道285号の「かみこあに」は、県内陸部主要国道の道の駅として建物やモニュメント、物産品に工夫を凝らしローカル機能を果たしているが、懸念材料は「かみこあに」と「たかのす」である。「かみこあに」は、秋田中央〜能代二ツ井間の無料化実験が始まれば、秋田市〜県北間の直近ルートの利便性を失い内陸路線の285号の利用の激減が予想されるからだ。また、国道13号線の「たかのす」は、世界の太鼓とギネスの大太鼓を展示し体験もできるユニークな施設を併せ持つが、今後、秋田自動車道が鷹巣地区を迂回し空港ICが完成した場合、白神山地、十和田八幡平、森吉山、田沢湖、角館方面の利用客は、地理的・時間的にも鷹巣市街地を一切経由することなく所定のエリアに向かうことが可能になり、道の駅としての存続すら危ぶまれるだろう▲高速道路が時間軸短縮と引き換にもたらすストロー化現象の心配はもう少し先になりそうだが、高速料金低廉化の流れが時代の潮流であるとすれば生き残りをかけた知恵が試される一方で、高速道路上に県北地区の産品を売込むサービスエリアの誘致は、今から大きなアドバルーンを上げて取り組むべき課題である▲道の駅の盛況ぶりは三つの定石があるようだ。一つは、山形県の「寒河江」のように、東北一の規模と施設を誇るテーマパークを兼ね備え、交通動脈上の要に位置し物流販売の拠点形成が完成している駅。二つ目は、都市近郊に位置し、高速を乗り継いでまでも消費を呼込む農産物等に特化した駅。そして規模は小さいが食品加工、工芸品等の手作り工房を持つ駅だ。「あに」の一角にはマタギの長刀鍛冶、狩猟用具、食品加工、民芸品等の工房が欲しいものだ。地域の物販機能を司る道の駅強化と併せて地元サービスエリア開設のアクションがほしい。(2010.7.12